|
はりねずみの親子が真夜中の森を散歩していて、おおかみに出会ってしまいました。親子はからだ中のはりをさかだてて、おおかみをやりすごそうとしますが…。
森の中で静かに繰り広げられるドラマが、みがきぬかれた言葉と美しい絵によって語られるこの作品は、幼い子どもに必ず出会わせてあげたい絵本の一つです。
叙情豊かなこの物語詩は、ソビエト(現ロシア)の作家マルシャークによって書かれました。マルシャークは、日本では戯曲「森は生きている」の作者として知られていますが、ソビエトでは、子どものための詩人、幼年文学の翻訳家、民話の脚色家、児童文学の評論家として100冊にも及ぶ本を書き上げ高く評価されている、偉大な児童文学者です。
『しずかなおはなし』がソビエトで絵本として出版されたのは1958年。日本では1963年に福音館書店から刊行され、今なお書店に並べられ文字どおりのロングセラーを続けています。
私はもう15年以上前に、図書館のおはなしコーナーでこの絵本を子どもたちに読み聞かせたことがあります。その際、どちらかといえば少人数向けのこの本を、十数名の親と子が静まりかえって聞いてくれたことにとても感動した覚えがあります。読み終わった後、普段はあまり話をしないのですが、一人のお母さんが「今のおはなしよかったわ。」と声を掛けてくれました。
人の心に深い感動をもたらす『しずかなおはなし』ですが、様々な趣向を凝らした絵本が並ぶ書棚にあっては、残念ながら地味で目立たない存在です。書店の絵本コーナーにいると、よく幼い子どもに絵本を選ばせているお母さんを見かけますが、派手なアニメを見慣れた子どもの目は、おそらく『しずかなおはなし』の上を素通りしてしまうことでしょう。この本はお母さんが選んであげなければ、子どもが出会うことができない本なのです。
ぜひ、お子さんのためにお母さんが選んであげてください。
|