HANAIBOOKS  〜HANAI お薦めの子どもの本〜

このページでは、HANAIが教材で使用する本や、ぜひ子ども達に
読んで欲しい本、お父様お母様にもお読みいただきたい本を
紹介していきます。

NO.26

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ホビットの冒険

ある日、朝ごはんをすませたビルボ・バギンズが自分の家の前でゆっくり一服していると魔法使いのガンダルフがやってきました。それが冒険の始まりでした。

J・R・R・トールキン/作
瀬田貞二/訳
岩波少年文庫
 上巻¥756下巻\714
1951年

2004年のアカデミー賞11部門を受賞した映画「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」(原作:『指輪物語』)をご存知の方は多いと思いますが、この『ホビットの冒険』は、原作の『指輪物語』以前の物語です。
『サンタ・クロースへの手紙』をご紹介した時に、作者のJ・R・R・トールキンについて少し触れましたが、トールキンは、イギリスの名門オックスフォード大学の中世英語と英文学の教授でした。いくつかの優れた研究論文を残していますが、トールキンを世界的な有名人にしたのは、子ども向けのファンタジー『ホビットの冒険』とそれに続く大人向けの長編小説『指輪物語』だったのです。
ホビットは、作者が作り上げた空想の種族です。ドワーフ小人よりも小さくて、ひげがはえていなくて、魔法の力は持たず、たいていおなかが太っており、足の裏にふかふかした茶色の毛がびっしりはえていて、ひとのいい顔で笑う時はこぼれるような笑顔になると紹介されています。『ホビットの冒険』は、この平和的で気のいい小人族の一人、ビルボ・バギンズが、運命のいたずらでドワーフ族の冒険に巻き込まれ、長い長い旅に出るという物語です。
この物語の素晴らしさは、訳者の瀬田貞二さんが、岩波少年文庫のあとがきの中で十分に語ってくださっていますので、少しご紹介しましょう。
「前略…、ファンタジーというのは、ゆたかな空想力をもって、この世ならぬふしぎな世界をつくりあげ、その架空世界のさまざまな事件をかきつらねた物語のことを、文学の一つの方面として名づけた名前ですが、このホビット物語は、まさにファンタジーのきわみです。…中略…こういうファンタジーですから、近ごろよく見かけるような、かよわい蝶のはばたきやら星のかけらやら夢のなごりやらを追いかける、気まぐれファンタジーの逃避的な小作品とは、まったくことかわって、さながら天界地界のまんだらをまざまざと織り込んだ、手のこんだ壁掛刺しゅうの大画面のように、堂々と実体をそなえた物語世界が、一つの別宇宙としてくりひろげられます。」
この一つの宇宙のような物語世界の中で、主人公のビルボ・バギンズは、超人的なヒーローではなく、少し気弱でお人よしで、抜け目無く交渉することもあれば、うっかりへまをすることもある私たちとよく似た面を持つ存在として描かれています。そして、一つ一つの困難を乗り越えていく中で、少しずつ成長していくのです。
瀬田さんはこうも言います。「この物語でも、トーリンをはじめとして、多くの者が死にましたが、ただしここでは、死や宿業が大切な問題なのではなく、邪悪なものとの戦い、ホビットの経験する信頼と愛と勇気と、悲劇をも生かしひらいていくちえという大きな心が、問題なのです。」物語の中に「死」が描かれるとき、それが子ども達にどのような影響を与えるのか、私たちは時に必要以上にナーバスになります。しかし、重要なのは、物語全体が何を読者に語りかけているのかであって、それさえ誤った方向になければ、必然的に描かれる「死」をむやみに恐れる必要は無い、そう信じたいと思います。

長崎県佐世保市でわずか12歳で亡くなった小さな女の子に黙祷をささげます。今は、私たち一人一人がご家族の苦しみをほんのわずかでもいいから分かち、感じることが大切であるような気がします。

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素材提供:「second home