HANAIBOOKS  〜HANAI お薦めの子どもの本〜

このページでは、HANAIが教材で使用する本や、ぜひ子ども達に
読んで欲しい本、お父様お母様にもお読みいただきたい本を
紹介していきます。

NO.27

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だれも知らない小さな国

ぼくがまだ小学校の三年生だった20年近い前のこと、小指ほどしかない小さな人を見た。

佐藤さとる/作
村上勉/絵
講談社 
\1,155
1959年

前回ご紹介した『ホビットの冒険』は、西洋の小人族のお話でしたが、この『だれも知らない小さな国』は日本生まれの小人の物語です。そして、『ホビットの冒険』がファンタジーの巨匠の作品であるのに対して、『だれも知らない小さな国』は、日本に初めて本格的な長編ファンタジーが誕生した記念碑的な作品と言われています。

物語は、主人公の「ぼく」が、20年前の小学三年生だった頃のことを思い出すところから始まります。「ぼく」が子どもの頃よく遊んだ小山に、誰も知らない小さな三角の空き地がありました。ある日「ぼく」はそこで、小指ほどしかない小さな人が手を振っているの見ます。その後、「ぼく」のうちは少し離れた町に引越してしまい、やがて長い長い戦争が始まります。やっと戦争が終わった時、「ぼく」は大人になっていました。大人になった「ぼく」は、あのなつかしい小山と、不思議な生き物のことを思い出します。「よし、いってみよう」。小山は変わらぬ姿で「ぼく」を待っていてくれました。そして、待っていたのは小山だけではなかったのです。。。

大人になって『だれも知らない小さな国』を読むと、描かれる自然豊かな情景や、生き生きとした登場人物、そして、優れたファンタジーなら当然のことですが驚くほどリアルで骨組みのしっかりした物語に惹き込まれます。けれども、子どもの頃初めて『だれも知らない小さな国』を手にした時、私は物語の中身よりもむしろ若菜珪さんの挿絵に惹かれたように記憶しています。若菜珪さんは、今の村上勉さんの前に挿絵を担当していた方ですが、独特のタッチで生き生きとした小人を描いておられ、幼い私の心の中にいた小人は、若菜さんの絵によってはっきりとした姿を獲得しました。
作者の佐藤さとるさんは、児童文学研究家の神宮輝夫氏との対談で小人についてに聞かれ、こう述べています。「それは、あとになって古田足日君なんかが中心になっていろいろとつっついてくれて−神宮さんももちろんそうだけど、小人の象徴するものをときあかしてくれて、じつは作者もびっくりした(笑)。書いているときのぼくは、そんなことなにも考えてもいなかったんですから。…中略… 読者は理屈で読まないですからね。おもしろかったというのはもうすでになにかが伝わっているんでね。」
佐藤さんは、著書『ファンタジーの世界』(講談社1978年)で『だれも知らない小さな国』がどのようにして書かれたのかを詳しく述べていますが、それによると、作品を何度も何度も一から書き直し、取り掛かった時から足掛け5年もかけて完成させたとのことです。やっとできあがった原稿を友人に頼んで印刷してもらったとき、その友人が「タイピストがあまりにおもしろく、つい先を読んでしまって手がお留守になる」と言った、とあります。
戦争が描かれていたり、田畑をつぶして道路を作る話が出てきたり、主人公のせいたかさんとおちびさんの出会いが描かれたりするため、『だれも知らない小さな国』には、様々な解釈がなされます。しかし、作者の佐藤さんがおっしゃるように、読み手はただただこの物語をおもしろがって読めばよい、そして子ども時代から大人になるまで何度も読み返せば、その時々で違うおもしろさに出会えるに違いない、そんな気がします。


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素材提供:「second home