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今回は、子ども達に大人気のロングセラー『ねずみくんのチョッキ』をご紹介します。
おかあさんにあんでもらったすてきな赤いチョッキ。ねずみくんにとてもよく似合います。するとアヒルがやってきて「ちょっと貸してよ」と借りていきました。次にさるがきて、あしかがきて、ライオンがきて、とうとう最後にはぞうが…。のびきったチョッキにねずみくんはがっかり。すると、ぞうさんがとってもすてきなアイディアでねずみくんを喜ばせてくれました。
なんてことはない単純なストーリーのこの絵本が、どうしてこんなに長い間子ども達に愛され続けるのでしょう?
その理由の一つは、チョッキを貸し借りするというところにあると思います。「かして」「いいよ」「ありがとう」という物の貸し借りは、子ども達にとって最も身近な他人とのコミュニケーションです。ねずみくんのチョッキをあひるが「かして」と言ってかりていくところから、子どもはすんなりとお話に入っていくことができるのです。
次に、チョッキを着たときの動物達の表情です。あひる以外はみんな歯を出して目をみひらいています。まだ視力が十分でない赤ちゃんも人間の目にはよく反応すると言われますが、動物達の見開いた目には、子どもを強くひきつける力があります。
そしていっさいの背景を省いて、真っ白な画面に白黒の動物だけが描かれ、画面を緑の枠で囲ったシンプルな絵は、よりいっそう動物達の表情をいきいきと見せてくれます。
文章を書く上野紀子さんと絵を描くなかえよしをさんはご夫婦ですが、お二人はあるインタビューでこう語っています。「今の時代、あらゆる場面で目で見えるもの、目立つものこそ素晴らしいと思われているようです。しかし、それでは心に余白が生まれません。『ねずみくん』を通して、目に見えないもの、目立たないものの大切さが伝わればうれしいです。」<2003/3/22
朝日新聞 「主役を語ろう 作者たちに聞く」>
動物たちの後ろの真っ白な余白に、子ども達がどんな豊かな世界を見ているのか、ぜひのぞいてみたいものです。
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