HANAIBOOKS  〜HANAI お薦めの子どもの本〜

このページでは、HANAIが教材で使用する本や、ぜひ子ども達に
読んで欲しい本、お父様お母様にもお読みいただきたい本を
紹介していきます。

NO.8

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ヒルベルという子がいた

「ヒルベルって、ほんとうにいたんですか?」
わたしがこの話をして聞かせると、子どもたちは、そうたずねます。
−うん、いたんだよ。だけど、ヒルベルって子がほんとにいたかどうか、そんなことは、それほどだいじじゃない。だいじなのは、ヒルベルのような、病院や施設でくらさなくちゃならない病気の子どものことを、きみたちが知るということなんだよ。
<著者・ヘルトリング>

ペーター・ヘルトリング/作
上田真而子/訳
偕成社 ¥1000
1973年

文学は、人の世のあらゆる営みを映すものですから、必ずしもハッピーエンドで終わるとは限りません。子ども向けの文学もその例外ではありません。ドイツの作家ペーター・ヘルトリングによる『ヒルベルという子がいた』は、ハッピーエンドで終わらない児童文学の代表とも言える作品です。

  ヒルベルは、町はずれにある浮浪児や母親に捨てられた子ども、里子に出された先で《いい子》ではなかった子どもなどが、とりあえず入れられている施設にいました。ヒルベルには病気があって、そのせいで時折ひどい頭痛に襲われ、なにがなんだかわからなくなることがありました。筋道をたてて話をすることも、読むことも書くこともできず、大人の言うことも聞かず、何を考えているのかわからないヒルベルのことを、大人たちはもてあまします。
ヒルベルのような子どもに出会った時、私たちはどんな態度を見せるでしょう?固くなってすくんでしまうのか、なんとか役に立ちたいと手を差し出すのか、無視して通りすぎるのか。ヒルベルに関わる大人たちが見せる態度も様々です。ある者はヒルベルから逃げ出し、ある者はヒルベルを目のかたきにして敵対し、ある者はヒルベルを抱いてやさしく頭をなで、そしてある者はヒルベルに小便まみれのパンツを投げつけられてむっとしながらも逃げ出さずヒルベルを理解しようとしました。しかし、その誰もヒルベルを「根気よく気をつけて」「理解しようと努力し」「ふつうにあたりまえの生活」ができるようにはしてくれませんでした。
ヘルトリングは、あとがきの中で、「子どもたちの質問に答えて」として、次のように語っています。「…そういう人(ヒルベルをかわいがる人)にかこまれて、ふつうに、あたりまえの生活ができればよかったんだよ。そうすれば、ヒルベルも、生活とはどんなものか、学べたんだがな。」

この『ヒルベルという子がいた』の素晴らしさは、ともすればウェットに語られがちなテーマを、決して感傷的にならずに、淡々とそして生き生きと描ききっている点にあると思います。読んだ後に涙は流れませんが、涙以上に深く心を揺すぶられ、いつまでもヒルベルのことを考えてしまう本です。
楽しい本、明るい本ばかりでなく、子どもたちが自然にこのような本に手を伸ばしてくれるようになることを願ってやみません。


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素材提供:「second home